「あの子は打たれ弱い」――そう感じたとき、先生に何ができるでしょうか
進路や就職の場面でうまくいかず、落ち込んでいる学生を前にすると、「見守るしかない」と感じることはないでしょうか。 ストレスを抱えた学生への関わり方は、正解が見えにくいものです。 この記事では、学生一人ひとりのストレスをどう受けとめ、面談や声かけにどうつなげていくかを、心理学の考え方もふまえて一緒に考えていきます。
「ストレスに弱い」と決めつける前に
「あの子はストレスに弱い」という言葉は、現場でよく口にされます。 けれども、ストレスを「強い・弱い」という一本のものさしで見ようとすると、見えなくなるものがあります。 それは、何を負担に感じるかは学生によって違う、という点です。
たとえば、大勢の前で発表することに強い緊張を感じる学生もいれば、それは平気でも、締め切りが重なると一気に余裕をなくす学生もいます。 初めての場所や慣れない人との関わりで消耗する学生もいれば、予定が急に変わることが苦手な学生もいるでしょう。 同じ出来事でも、ある学生には大きな負担になり、別の学生にはそうでもない。 ストレスは、その人が置かれた状況と、その人自身の受け止め方の組み合わせで生まれるものだからです。
ですから「打たれ弱い」とひとくくりにしてしまうと、その学生が実際に何につまずいているのかが見えにくくなります。 まず立ち止まりたいのは、「この学生はどんな場面で負担を感じやすいのだろう」という問いのほうでしょう。
感じ方が違えば、対処のしかたも違う
心理学でも、ストレスへの向き合い方は「その出来事をどう受け止めるか」と「そのあとどう対処するか」の組み合わせで捉えられています(ストレス研究で知られるラザルスらの考え方です)。 むずかしく考える必要はありません。要は、負担の感じ方が人それぞれ違うように、そのときに選ぶ対処のしかたも、人や状況によって違うということです。
対処のしかたには、大きく分けて二つの方向があると言われます。 ひとつは、問題そのものに働きかける方向です。やるべきことを整理したり、人に相談したり、計画を立て直したりして、状況を変えようとするやり方です。 もうひとつは、気持ちのほうを整える方向です。いったん距離を置いたり、気分転換をしたり、誰かに話を聞いてもらったりして、心の負担をやわらげるやり方です。 どちらが優れているというものではなく、場面によって使い分けられることが望ましいと考えられています。
こうして見ると、支援のかたちも一人ひとり違ってよいことがわかります。 すぐに動いて解決したい学生には具体的な手立てを一緒に考え、まず気持ちを落ち着けたい学生にはその時間を認める。 「頑張れ」と励ますだけでなく、その学生が使いやすい対処のしかたを一緒に探していく関わりが、支えになりやすいでしょう。
面談と声かけで、先生にできること
では、ストレスを抱えた学生に、先生は面談や日々の声かけで何ができるでしょうか。 まず大切にしたいのは、「なんとかしてあげよう」と先回りしすぎないことです。 先生が原因を言い当てて解決策を示すよりも、学生自身が「自分は何にしんどさを感じ、どう乗り切ろうとしているのか」に気づけるよう、対話で寄り添うほうが支えになりやすいものです。
面談では、次のような問いかけが使いやすいでしょう。
「最近、どんな場面でしんどさを感じた?」 「そのとき、自分ではどう乗り切ろうとした?」 「うまくいった方法はあった? 次に使えそうな手はありそう?」
こうした問いは、ストレスの原因を探し出して正すためのものではありません。 学生が自分の負担の感じ方や、これまでに使ってきた乗り越え方に気づき、言葉にしていくためのものです。 うまくいった対処があれば、それを「次も使える自分の手」として一緒に確認しておく。 本人の実感を聞きながら理解を深めていく姿勢は、検査結果を面談でフィードバックするときにも共通して大切です。
日々の声かけでも、「大丈夫?」と一言かけて表情を見る、いつもと様子が違うときに立ち止まる、といった小さな気づきの積み重ねが、学生の変化に早く気づく手がかりになるでしょう。 先生がすべてを解決する必要はありません。 強い落ち込みや心身の不調が続いている場合は、先生だけで抱え込まず、学内の相談窓口や専門家につなぐことも大切です。 気にかけてくれる人がいると学生が感じられること自体が、大きな支えになります。
なお、コアスキルには、現在のストレスと慢性的なストレスについて簡易的に確認する参考項目もあります。 ただし、ストレスの原因や対処のしかたまで分かるものではありません。 普段の様子や本人との対話とあわせて、学生の状態に目を向けるための参考情報の一つとして活用していただくものです。
まとめ
最後に、要点を整理します。
- ストレスを「強い・弱い」だけで捉えると、学生ごとの違いが見えにくくなる
- 負担の感じ方だけでなく、選びやすい対処のしかたも学生や状況によって違う
- だから支援も画一的ではなく、その学生に合ったかたちを一緒に探すことが大切
- 面談では原因を言い当てるより、本人が自分の受け止め方や乗り越え方に気づけるよう対話で寄り添う
ストレスを抱えた学生に、先生がすべてを解決してあげる必要はありません。 その学生が何に負担を感じ、どう乗り越えようとしているのかを一緒に見つめること。 その落ち着いた関わりそのものが、学生にとって大きな支えになるでしょう。
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