一度の不採用でしばらく動けなくなる学生に、先生は何ができるでしょうか
面接に落ちてから教室に来なくなる、「もう就活は無理です」とうつむいてしまう。進路指導をしていると、失敗のあとになかなか立ち直れない学生を前に、どう声をかけたものかと迷う場面があるでしょう。ここでは、立ち直る力をどう捉え、面談や声かけでどう支えていくかを、心理学の考え方もふまえて一緒に考えてみます。
「立ち直る力」は生まれつきの強さではない
失敗を引きずる学生を見ると、つい「あの子は打たれ弱いから」「もともとメンタルが弱いから」と、その子の性質として片づけたくなることがあります。逆に「もっと強くならないと社会でやっていけない」と、本人を鍛えようとする方向に向かいたくもなるでしょう。
心理学では、困難な出来事のあとに適応を取り戻していく過程を「レジリエンス(立ち直る力)」と呼びます。ここで大切なのは、レジリエンスは生まれ持った性格の強さだけで決まるものではない、という点です。同じ学生でも、置かれた状況や周囲の関わりによって、立ち直りやすいときもあれば、なかなか力が湧かないときもあります。回復には人それぞれの時間差もあります。すぐに切り替えられる学生もいれば、しばらく時間がかかる学生もいます。それは単純な強さの優劣ではなく、本人の状態やこれまでの経験、置かれた状況、周囲から得られる支えなどが関係していると考えられています。
先生にとって大事なのは、この言葉を学生に教えることではありません。「弱い子だから」という見方をいったん外し、「今、この学生が立ち直るには何が支えになるだろう」と問い直すこと。その一歩で、次にかける言葉は変わってきます。なお、そもそも失敗を重く受け止めやすい学生への理解については、落ち込みやすい学生への声かけでもふれています。
立ち直りを支えるのは一つではない――さまざまな「保護要因」
では、立ち直る力は何に支えられるのでしょうか。レジリエンス研究では、逆境から人を守る働きをするものを「保護要因」と呼び、それは一つではなく複数あると考えられています。
たとえば、信頼できる大人がそばにいること、家族や友人といった周囲からの支え、「自分にもできそうだ」と思える感覚(自己効力感)、これからに希望を持てること、安心して過ごせる学校の環境などです。立ち直りは本人の力だけで生まれるものではなく、こうした本人の内側の要因と、周囲との関わりの組み合わせによって支えられると考えられています。
このように捉えると、先生の関わりそのものが、学生にとって大切な保護要因の一つになりうることが見えてきます。気にかけてくれる大人が学校にいる、話を聞いてくれる人がいる。それだけで、学生が次の一歩を踏み出す支えになることがあります。「本人を強くする」と気負わなくても、安心して話せる関係をつくることや、これまでに乗り越えた経験を一緒に思い出すことが、立ち直りを後押しする関わりになるでしょう。
面談でできること――失敗を「次の一歩」に小さくつなぐ
具体的に、面談や声かけでは何ができるでしょうか。まず心がけたいのは、失敗を早く忘れさせようとしないことです。「切り替えていこう」と急がせるより、その学生が今どう感じているかを、ていねいに聞くところから始めます。
そのうえで役立つのが、うまくいかなかった経験を「次の一歩」に小さくつなぎ直すことです。たとえば、「今回うまくいかなかったことから、次に活かせそうなことはあるかな」と一緒に振り返ってみる。このとき、次の行動はできるだけ小さく設計するのがよいでしょう。「もう一度エントリーシートを全部書き直す」ではなく、「気になる一社の志望動機だけ、もう一度考えてみる」くらいの小ささにすると、動き出しやすくなります。小さな一歩でも「できた」という実感が重なることが、先ほどの自己効力感を少しずつ育てていきます。
過去に困難を乗り越えた経験を一緒に思い出すことも支えになります。「前に大変だったとき、どうやって乗り越えた?」と聞いてみると、本人が自分のなかにある力に気づくきっかけになることがあります。先生が答えを与えるのではなく、学生自身が自分の支えに気づけるよう問いかけるのが、この関わりの中心です。
学生の特徴をつかむ一つの参考資料として、適性検査の結果を役立てることもできます。ただし、メンタル面に関する結果は学生本人に直接返すものではなく、学校の先生が支援を考えるための情報として提供されます。生の点数で「あなたは立ち直る力が弱い」と伝えるような使い方はせず、あくまで日頃の様子や本人の話とあわせて、気にかけたい学生に早めに気づくための材料として扱います。
学生が抱えるストレスの受け止め方や、日頃の声かけについては、学生のストレスをどう支えるかでも詳しく紹介しています。
なお、落ち込みが長く続く、欠席が増える、眠れない・食べられないといった様子が見られる場合や、自分を傷つけることをほのめかす発言があった場合は、就職担当の先生だけで抱え込まず、学生相談室や保健室などの専門部署と連携することも大切です。
まとめ
最後に、要点を整理します。
- 立ち直る力は生まれつきの強さだけで決まるものではなく、状況や関わりによって変わり、回復には人それぞれの時間差があります。
- 立ち直りは、信頼できる大人との関係や小さな成功体験など、本人の内側の要因と周囲との関わりの組み合わせによって支えられます。
- 面談では、失敗を早く忘れさせるより、小さな次の一歩を一緒に見つけ、過去に乗り越えた経験に気づけるよう問いかけることが支えになります。
失敗から立ち直る関わりに、決まった正解はありません。それでも、気にかけてくれる大人がそばにいることそのものが、学生にとって大きな保護要因になるでしょう。
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コアスキルでできること
コアスキルは、学生が「今の自分」を客観的に知るための学生向け自己分析診断テストです。
8つの性格タイプや社会人に求められる力(社会人基礎力)の傾向がわかり、学生自身の自己PRや面接・ES対策に活用できます。
先生にとっては、学生との面談を進めるための材料としてお使いいただけます。また、メンタル面に関する結果は学校の先生にのみ提供され、気にかけたい学生への早めの声かけや、一人ひとりに合った関わり方を考える手がかりになります。結果は学生を評価するためのものではなく、一人ひとりが力を発揮しやすい進路を考えるための材料として役立つでしょう。

