「何か困っていることはない?」――その問いかけに、答えは返ってきていますか
入社して数か月の新入社員に声をかけても、「大丈夫です」で終わってしまう。そのまま様子を見ているうちに、退職の相談を受ける。そんな流れを避けるために、受け入れる側では何をどう確かめ、どこまで動けるのかを考えてみます。
調査で上位に挙がったのは、働き方・配属・育成の調整
学情が2026年6月に実施した調査では、離職を防ぐために企業に求める施策として、次の項目が上位に挙がりました。
- 働き方(時間・場所)の柔軟性:50.0%
- 配属・業務内容の柔軟な見直し:42.3%
- 丁寧な研修・OJT・教育制度:40.4%
同じ調査では、早期退職に抵抗を感じている人が63.4%を占めています。ただし、その理由として挙がっているのは「早すぎる退職は転職市場で不利になる」「継続力がないと思われる」といった声で、抵抗感は「いまの会社に残りたい」という気持ちと同じではありません。辞めることをためらいながら働いている人が一定数いる、と読むほうが近いでしょう。
ただし、読むうえで前提が2つあります。回答者は52名と少なく、20代向け転職サイトに登録している2026年4月入社の新入社員が対象のため、転職を意識している層に寄った結果である可能性があること。そして、並んでいるのは「求められている施策」であって、「実施すれば離職が減ると確かめられた施策」ではないことです。
それでも、上位3つが働き方・配属・育成という、受け入れる側で調整できる範囲に集まっている点は、手がかりになりそうです。以下では、実際に手を動かす順番で見ていきます。
困っている場面は、聞き方を変えると見えてくる
「何か困っていることはない?」という問いかけは、答えるほうにはかなり難しいものです。自分の困りごとを言葉にしたうえで、それを伝えてよいかどうかまで、その場で判断しなければならないからです。
そこで、事実から入る順に組み替えます。
- 事実を聞く:「今週は、どの仕事にいちばん時間を使いましたか」
- 場面を聞く:「そのなかで、手が止まった場面はありましたか」
- 希望を聞く:「もう一度同じ仕事をするとしたら、どこを変えたいですか」
困りごとを申告してもらうのではなく、実際にあった場面を一緒に振り返る形にすると、本人も口に出しやすくなります。答えにくい問いを最初に置かないことが要点です。
あわせて、面談の時期をあらかじめ決めておくことをおすすめします。何かあったら声をかける、という運用では、忙しい時期ほど後回しになりがちです。入社1か月、3か月、半年といった区切りで機会を用意しておけば、本人も見通しを持てます。ただし、それだけでは次の面談まで抱え込ませてしまうことにもなりかねません。時期を決めることと並べて、面談を待たずに相談できる相手と連絡先も伝えておきます。
もう一つ、その場のやり取りで終わらせないことも大切です。出てきた場面を事実として短く記録し、人事と配属先で共有できる形にしておくと、次の段で動けるようになります。その際、何を、誰に、どのように伝えるかを本人と確認しておきます。上司との進め方について聞いた話が、そのまま上司へ伝わってしまうと、次から話してもらえなくなるおそれがあるためです。
変えられることを先に決め、変えられないことは理由を添えて伝える
聞き取った内容を実際の調整につなげるには、人事と配属先の間であらかじめ線を引いておく必要があります。次の3つに仕分けておくと、判断が早くなります。
- 配属先の判断ですぐ変えられること(担当の割り振り、報告の頻度、指導役の組み合わせなど)
- 人事の判断が必要なこと(配属の変更、勤務時間や勤務場所の運用など)
- 現時点では変えられないこと(事業上どうしても必要な業務、繁忙期の体制など)
この仕分けを面談の前に済ませておくと、その場で「検討します」とだけ答えて終わる事態を避けられます。そのうえで、項目ごとに誰が実行し、いつまでに本人へ回答するかを決めます。
たとえば、複数の人から指示が来て優先順位に迷う、という話が出たとします。配属先の責任者が指示の窓口を一本化し、翌週に人事が同じ困りごとが続いていないかを確認する。ここまでを一つの区切りとして決めておく、という進め方です。
調整したあとは、確かめる時期も決めておきます。まず、決めた変更が実際に行われたかを確認します。そのうえで、困っていた場面がどう変わったかを本人に尋ねます。1か月後に同じ質問をもう一度してみると、変化があったかどうかが分かります。
そして、変えられない場合こそ、伝え方が要ります。理由を説明し、いつなら見直せるのかを添える。「難しい」とだけ返すと、本人が次から相談をためらうおそれがあります。伝えられる範囲で背景を共有するほうが、納得は得やすいでしょう。
なお、こうしたやり取りの前に、本人が負荷を感じやすい場面や仕事の進め方の傾向をつかんでおくと、どこから確認するかを決めやすくなります。ただし、適性検査の結果が本人の困りごとを言い当ててくれるわけではありません。何が分かって何が分からないかは、適性検査でわかること・わからないことで整理しています。特性と職場環境の組み合わせから生じるやりにくさについては、仕事の「やりにくさ」はどこから来るのかもあわせてご覧ください。
まとめ
最後に、要点を整理します。
- 今回の調査で上位に挙がったのは働き方・配属・育成の調整でしたが、これは求められている施策であって、効果が確かめられた施策ではありません
- 困っている場面は「困っていることはない?」では出てきにくいため、事実・場面・希望の順で振り返る形にします
- 聞いたあとに動けるよう、変えられること・人事の判断が要ること・変えられないことを先に仕分けたうえで、担当と回答期限を決め、変えられない場合は理由と見直しの時期を伝えます
受け入れの巧拙は、制度の多さよりも、確かめて動かす一連の流れが決まっているかどうかに表れるのではないでしょうか。
\ 入社後の調整は、入り口の見立てから始まっています /
面接だけでは、働き方の傾向や負荷を感じやすい場面までは見えにくいものです。面接で起きやすい偏りのセルフチェック、適性検査でわかること・わからないことの早見表、採用判断前のチェックリストを、無料資料にまとめました。
▶ 無料資料「面接だけに頼らない採用判断ガイド」をダウンロード
SurveyYOUでできること
SurveyYOUは、面接だけでは見えにくい人物の傾向を把握するための適性検査です。Part1 性格では、性格特性に加えて、働き方の傾向や負荷を感じやすい場面などを確認できるため、配属先での任せ方や、入社直後に手厚くしたい部分を考える材料になります。思考タイプからは、物事の捉え方や仕事の進め方の違いが見えるので、面談での聞き方や指示の出し方を本人に合わせて調整するときの手がかりにもなるでしょう。採用の場面だけでなく、入社後の受け入れにも続けて使える情報です。

