「おとなしい人」は、本当に控えめなだけでしょうか
面接で口数が少なく、落ち着いた印象の候補者を見ると、つい「消極的なのかもしれない」と感じてしまうことがあります。けれど、おとなしく見えることと、心理学でいう内向性とは、必ずしも同じではありません。本記事では、内向型の強みとは何かを整理しながら、採用や配置でその力をどう活かすかを考えていきます。
内向型の強みは、短い面接では見えにくい
前回の記事外向型・内向型とはでも触れたように、外向型か内向型かは「どちらが優れているか」という話ではありません。とはいえ実際の採用の場では、明るくよどみなく話す人が「積極的だ」と受け取られやすく、内向的な傾向のある人の持ち味は見えにくくなりがちです。
内向的な傾向と関連して表れやすい持ち味として、一人でじっくり考える、相手の話を丁寧に聴く、慎重に判断する、といったスタイルが挙げられます。こうした持ち味は、初対面の短い面接では伝わりにくいものです。にぎやかさや反応の早さと違って、静かな集中や思慮深さは、その場ではなかなか目に映りません。だからこそ「おとなしい=力が足りない」と受け取られやすいのでしょう。
ここで気をつけたいのは、内向型を「強みの持ち主」として持ち上げすぎることもまた、別の決めつけになってしまう点です。内向的な人が必ず聞き上手で慎重、というわけではありません。あくまで、そうした特徴が見られることがある、という程度に受け止めておくのがよいでしょう。大切なのは、外向的な振る舞いの有無だけで人を測らない、という姿勢だと言えます。
内向型が力を発揮しやすい環境がある
内向的な傾向は、置かれた環境によっては明確な強みとして働きます。これに関連する研究として、経営学者のアダム・グラントらが2011年に発表したものがよく知られています。
グラントらは、宅配ピザ店の店長と従業員を対象に、店長の外向性の高さと店舗の業績との関係を調べました。その結果、従業員が自分から提案や工夫を積極的に行うチームでは、外向性の低い店長が率いる店舗のほうが高い利益を上げやすい関係が見られたと報告されています。一方、従業員が受け身なチームでは、外向性の高い店長のほうが成果につながりやすいという、逆の関係も示されました。研究者たちは、外向性の低いリーダーは部下の提案に耳を傾け、その主体性を活かしやすい一方、外向性の高いリーダーは自ら積極的に方向を示そうとするため、主体的な部下との間で働きかけがぶつかることがあるのではないか、と説明しています。
もちろんこれは特定の状況を調べた一つの研究であり、内向型が仕事全般で優れていることを示すものではありません。それでも、「外向型のほうがリーダーに向いている」という思い込みが、いつでも正しいわけではないことを示す例だと言えるでしょう。大切なのは、外向型と内向型のどちらが優れているかではなく、本人の傾向と、周囲の人や仕事環境との組み合わせです。人の特性の表れ方は、置かれた環境や周囲との関係によっても変わってきます。これは、ストレス耐性を個人だけの問題として捉えない考え方とも共通する見方です。
採用では、発言量や第一印象だけで判断しない
こうした見方を採用の場面に引きつけると、まず気をつけたいのは、面接の印象だけで「積極性が足りない」と決めてしまわないことです。物おじせず話す姿と、実際の仕事の力は別のものです。第一印象に引っ張られやすい傾向については、面接だけで人を見極められない理由でも触れたとおりです。
具体的には、たとえば次のような見方が役に立つでしょう。発言量の多さだけで積極性を測らないこと、質問への回答の速さだけで理解力を測らないこと、集団面接での目立ち方だけで協調性を測らないことです。じっくり考えて答える様子を「反応が鈍い」と見るか、「慎重に言葉を選んでいる」と見るかで、評価は大きく変わってきます。短い面接で見えるのはあくまで一面であり、それだけでその人の力を判断しないという姿勢が、見落としを防ぐことにつながります。
配置では、職種よりも仕事の進め方に目を向ける
採用したあとの配置や任せ方でも、内向的な傾向を「職種への当てはめ」に使わないことが大切でしょう。「内向型だから一人で行う仕事へ」といった固定的な割り振りは、かえって持ち味を狭めてしまいかねません。
現実的なのは、同じ仕事のなかでも、その人が力を発揮しやすい進め方を考えることです。たとえば、集中して考える時間を確保できるか、発言の前に情報を整理する余地があるか、その場の即興的な発言だけでなく、文章や資料でも意見を出せる場が用意されているか、といった視点です。こうした環境の調整は、内向的な傾向のある人にかぎらず、多くの人が力を出しやすくなることにもつながります。傾向はあくまで、任せ方やフォローの仕方を工夫するための手がかりとして使うのがよいでしょう。こうした「傾向としての特性」の見方は、性格特性とは何かもあわせてご覧いただくと整理しやすいはずです。
まとめ
最後に、要点を整理します。
- おとなしく見えることと内向性は同じではない。内向的な傾向と関連して表れやすい持ち味(じっくり考える、よく聴く、慎重に判断する)は、短い面接では見えにくい
- 内向型を一律に「強みの持ち主」と持ち上げるのも別の決めつけ。そうした特徴が見られることがある、という受け止め方が現実的
- 外向性の低いリーダーが主体的なチームで成果を上げやすいとする研究もある。大切なのは優劣ではなく、本人の傾向と環境の組み合わせ
- 採用では発言量や第一印象だけで判断せず、配置では職種への当てはめではなく、力を発揮しやすい仕事の進め方に目を向ける
内向型か外向型かを優劣で見るのをやめると、候補者一人ひとりの持ち味と、それが活きる環境が見えやすくなります。採用や配置の判断にも、きっと役立つでしょう。
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誰かを「内向型だから不安」「外向型だから安心」と判定するためではなく、その人の持ち味が活きやすい環境や任せ方を考えるヒントとして活用いただけます。

