面接で「自分らしさ」を伝える――整理した自己理解を言葉にする

面接で学生が自分の言葉で自分らしさを伝えられるよう支える進路指導の関わり方を解説するコアスキルのブログ記事アイキャッチ画像
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「準備してきたのに、面接になると別人みたいになる」

自己分析にも取り組み、書いたものも悪くない。それなのに、面接練習になると急に硬くなり、どこかで聞いたような言い回しばかりになってしまう学生はいないでしょうか。 この記事では、整理したはずの自己理解が面接の場で言葉にならないのはなぜかを考え、先生が面接練習でどこを見て、どう声をかけるとよいかを整理していきます。

なぜ、面接になると言葉が「借り物」になるのか

面接練習をしていると、こんな場面に出会うことがあります。 就活本やインターネットで見かけるような言い回しをそのまま話す。声が小さくなり、視線が下がる。用意した質問には答えられるのに、少し角度を変えて聞くと途端に詰まってしまう。 準備不足に見えることもありますが、必ずしもそうとは限らないでしょう。むしろ、準備してきた学生ほどこうなることもあります。

心理学には、人が他者からどう見られるかを調整しようとする働きを扱った、印象管理(自己呈示)という考え方があります。 LearyとKowalski(1990)は、この働きを「どれくらい強く、自分の見られ方を調整したいと思うか」という部分と、「では実際にどんな自分を、どう見せるか」という部分の二つに分けて整理しました。 後者を組み立てるときの材料の一つとして、自分自身についての理解が挙げられています。

ここから先は解釈になりますが、面接という場面では「よく見られたい」という気持ちが強く働きやすい一方で、自分をどう伝えるかが十分に整理できていないと、手元の材料が足りず、一般的で無難な表現に頼りやすくなるとも考えられます。 本記事でいう「借り物の言葉」とは、意欲の低さを意味するのではなく、伝えたい気持ちだけが先に立っている可能性を表す言葉です。

そう捉えると、先生の最初の一手は「うまく話す練習」ではなくなります。 「今、何がいちばん不安?」「どこで詰まった感じがした?」と、緊張の中身を本人に言葉にしてもらうところから始めるほうが、次に何を整理すればよいかが見えてきます。

面接で必要なのは「正解」ではなく「自分の言葉」

「自分らしさを出しなさい」と言われても、学生は困ってしまうことがあります。 盛って話すのはよくない、けれど正直に話すだけでは弱い気がする。その板挟みで、結局どこかにある正解を探しに行ってしまうわけです。

ここで、盛るか正直かの二択にしないことが大切でしょう。 自分について何をどこまで話すかを選ぶことは、隠すことでも飾ることでもなく、伝え方の工夫です。同じ経験でも、どの場面を選び、どの言葉で言うかによって、伝わり方は変わります。 「自分らしさ」とは特別な個性を演出することではなく、自分の中にある材料から、その場に合うものを自分で選べる状態のことだと考えると、学生も肩の力が抜けやすくなります。

検査結果は、このときに手元に置く「言葉の候補」として使えるでしょう。 ただし、結果をそのまま読み上げさせるのは避けたいところです。「協調性が高いと出ているから、そう言えばいい」と伝えてしまえば、学生はまた別の借り物を手にするだけになってしまいます。

順番としては、本人の実感を先に聞くのがよいでしょう。 「面接で何を伝えたいと思っている?」と本人の言葉を引き出したうえで、「検査ではこういう傾向も出ているけれど、当てはまる場面はある? 違うと感じるところは?」と並べてみます。 一致していれば、その経験を具体的に掘り下げていけばよいですし、一致しなければ、なぜ違うと感じるのかを一緒に考えることが、そのまま自分の言葉づくりになります。検査結果と本人の実感がズレたときの関わり方は、検査結果と本人の実感がズレたとき――理由を一緒に探る進路指導でくわしく扱っています。

面接練習で先生が見たい三つのポイント

面接練習では、話し方の巧拙よりも、次の三つを見ておくと関わりどころが見つけやすくなります。

一つ目は、その言葉が本人のものになっているかです。 気になる表現があったら、「今の言い方、自分の言葉で言い直すとどうなる?」と本人に返してみます。先生が模範解答を渡すと早いのですが、それでは借り物が一つ増えるだけになってしまうでしょう。言い換えは、本人にさせることに意味があります。

二つ目は、想定外の質問で、どこが崩れるかです。 面接練習というと、崩れないように何度も繰り返すものになりがちです。けれど、質問の角度を少し変えたときに詰まった箇所は、まだ自分の言葉になっていない部分が表に出たところとも言えます。 崩れたこと自体を失敗と扱わず、「今、何を聞かれて困った?」とその場で振り返れば、次に整理すべき材料がはっきりします。崩れる場所は、責める対象ではなく、一緒に整理できる手がかりでしょう。

三つ目は、短所や弱みをどう語っているかです。 「直します」で終わる説明は、その場は無難ですが、本人の理解が深まったとは限りません。 「どんな場面でそれが出やすい?」「そのとき、どうしてきた?」とたずねると、克服宣言ではなく、自分の特性との付き合い方として語れるようになっていきます。これは、力を発揮しやすい環境を自分で考える練習でもあるでしょう。

あわせて、先生自身の見方にも少し注意しておきたいところです。 話すのが上手な学生は準備ができているように見え、口下手な学生は準備不足に見えてしまいがちですが、その二つは必ずしも一致しません。話し方の印象に引きずられていないか、見る側として振り返る視点も持っておくとよいでしょう。この点は、先生の思い込みに注意――ハロー効果・確証バイアスと学生理解でくわしく扱っています。

まとめ

最後に、要点を整理します。

  • 面接で言葉が借り物になるのは、意欲が低いからとは限りません。よく見られたい気持ちが強い一方で、自分をどう伝えるかが整理できていないと、無難な表現に頼りやすくなるとも考えられます。
  • 「自分らしさ」は特別な個性の演出ではなく、自分の中にある材料からその場に合うものを選べる状態のこと。検査結果は答えではなく「言葉の候補」として、本人の実感を聞いたあとに並べます。
  • 面接練習では「本人の言葉になっているか」「想定外の質問でどこが崩れるか」「短所をどう語っているか」の三つを見ます。崩れた箇所は失敗ではなく、一緒に整理できる手がかりです。

面接指導は、うまく話せるようにすることだけが目的ではないでしょう。 整理してきた自己理解を、その場で自分の言葉として選び直せるようになること。詰まった場所を一緒に振り返る関わりが、その力を少しずつ育てていきます。

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