ガクチカが書けない学生へ――検査結果からエピソードを掘り起こす進路指導

検査結果を手がかりに学生の具体的な経験を面談で掘り起こす進路指導の進め方を解説するコアスキルのブログ記事アイキャッチ画像
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「書くことがない」と言う学生に、本当に経験がないのでしょうか

エントリーシートの「学生時代に力を入れたこと」を前に、手が止まってしまう学生は少なくないでしょう。 本人は「書けるような経験がない」と言いますが、話をよく聞いてみると、経験がないのではなく、それを思い出すきっかけや、表に出すきっかけがないだけということもあります。 この記事では、まだ経験が言葉になっていない段階で、先生が検査結果を手がかりに、学生の経験をどう掘り起こせるかを考えていきます。

「エピソードがない」には二つの背景がある

面談で「ガクチカに書けることがない」と言う学生には、大きく二つの背景が考えられます。 一つは、具体的な経験をその場ですぐには思い出せないこと。 もう一つは、経験は覚えているけれど、「普通すぎる」「書くほどのことではない」と本人が判断してしまっていることです。

この二つは重なり合うこともあります。 繰り返してきたことや、本人が特別だと思っていない経験は、具体的な一場面としてすぐには思い出せないことがありますし、思い出せても「わざわざ話すことでもない」と口に出さないこともあるでしょう。 この記事では、この二つの背景を踏まえながら、主に「具体的な経験を思い出すための支援」に焦点を当てていきます。

この段階では、出てきた経験をすぐに自己PRとして整理する必要はありません。 まずは、まだ表に出ていない具体的な場面を思い出してもらい、面談の材料を増やすことを目指します。 どの経験を選び、どう文章に整えるかは、その次の段階で考えていけばよいでしょう。

検査結果を「思い出すための手がかり」として使う

人は、何も手がかりがない状態で「何か経験を話して」と言われても、なかなか具体的な場面を思い出せないものです。 一方で、関連する言葉や、時期・場所・一緒にいた人・そのときの役割といった手がかりがあると、自分の過去の具体的な経験を思い出しやすくなると言われています。 心理学では、こうした過去の個人的な経験の記憶を自伝的記憶と呼び、その想起には「手がかり」が大きく関わることが知られています。

検査結果も、この「手がかり」の一つとして使えるでしょう。 たとえば「周囲に合わせながら進める傾向」といった結果は、それ自体が答えなのではなく、本人が自分の経験を振り返るきっかけになります。 ここで大切なのは、検査結果を答えとして渡さないことです。 「あなたは協調性が高いから、そう書けばいい」と伝えてしまうと、学生は自分の経験ではなく、検査のラベルをなぞるだけになってしまいます。 検査結果を「答え」ではなく「考える材料」として読む考え方は、検査結果は「答え」ではなく「考える材料」でくわしく扱っています。

そこで、結果は仮説や問いのきっかけとして扱うのがよいでしょう。 「周囲に合わせながら進める傾向が出ていますが、思い当たる場面はありますか。反対に、当てはまらないと感じた場面もありますか」というように、一致する経験だけでなく、当てはまらない経験もあわせてたずねてみます。 検査結果に合う経験だけを探させてしまうと、答え合わせのようになり、学生の振り返りを一つの方向に誘導してしまうことがあります。 合う経験も、合わない経験も、どちらも本人の具体的な場面を思い出すきっかけになります。

掘り起こしの順番――小さな経験から場面を取り出す

経験を掘り起こすときは、問いかけの中身だけでなく、たずねる順番も助けになります。 おおまかに、次のような流れを基本にするとよいでしょう。

まず、時期や範囲を区切ります。 「高校三年間で」より「二年生のとき」「部活で」というように範囲を絞るほうが、場面を思い出しやすくなります。 次に、場所・相手・そのときの役割から、具体的な場面を探していきます。 「誰と一緒だった?」「そのとき何を任されていた?」といった問いが、記憶の手がかりになります。 そのうえで、本人が実際にした行動を具体化します。 「そこで自分は何をした?」と一場面の行動まで下ろしていくと、ぼんやりした話が具体的なエピソードに変わっていきます。 最後に、周囲の反応や、その後の変化を確認します。 「相手はどう反応した?」「何か変わったことはあった?」という問いが、経験の輪郭をはっきりさせてくれるでしょう。

ここで気をつけたいのは、意味づけや評価は、経験が出てきてから行うということです。 最初から「それはガクチカに使えるか」「立派な経験か」と評価してしまうと、学生は小さな経験を話しにくくなってしまいます。 掘り起こす段階では、良し悪しをいったん脇に置き、まずは具体的な場面を数多く表に出すことを目指します。 出てきた経験の中からどれを選び、どう整理するかは、その次の段階の関わりです。 この整理から自己PRにつなげる段階については、自己分析を自己PRにつなげる――検査結果から「伝える材料」を整理するでくわしく扱っています。 掘り起こす段階と、選ぶ・整理する段階を分けておくと、学生も安心して小さな経験を口にできるようになるでしょう。

まとめ

最後に、要点を整理します。

  • 「ガクチカに書くことがない」の背景には、具体的な経験をすぐに思い出せない場合と、経験は覚えているが「普通すぎる」と判断している場合があります。この記事では主に、思い出すための支援に焦点を当てました。
  • 人は手がかりがあると過去の経験を思い出しやすくなります。検査結果は答えではなく、経験を振り返る一つの手がかりとして使い、当てはまる場面も当てはまらない場面もあわせてたずねます。
  • 掘り起こしは「時期を区切る→場所・相手・役割から探す→行動を具体化する→反応や変化を確認する」の順に進め、評価は経験が出てから行います。掘り起こす段階と選ぶ段階を分けることが大切です。

ガクチカや自己PRの指導は、いきなり立派な文章を書かせることではないでしょう。 まずは、本人も忘れていたような具体的な経験を、面談の中で一緒に表に出していく。 その積み重ねが、学生が自分の言葉で語れる材料をそろえる土台になっていきます。

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