適性検査の費用対効果はあるのか?採用コストと離職コストから考える

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「1名いくら」で見ていませんか――採用コストの、その先にあるもの

適性検査を導入するかどうかを考えるとき、多くの方がまず気にするのは「受検1名あたりいくらか」という費用でしょう。もちろん大切な観点です。ただ、費用対効果を考えるうえで目に入っている数字は、採用にかかるコストの一部かもしれません。ここでは、何と何を比べれば「費用に見合うか」を判断できるのかを整理していきます。

目に見える費用だけで判断していないか――見落とされやすい採用の負担

採用媒体費や検査費用のように、数字としてはっきり見えるコストは意識しやすいものです。一方で、再採用の工数や現場が抱える負担、新しい人が戦力になるまでの時間といった、複数の部署や期間に分散する損失は思い浮かべにくくなります。

この判断のかたよりを考えるうえで参考になるのが、心理学で知られる「利用可能性ヒューリスティック」です。人は、思い出しやすい事例をもとに、そのことの起こりやすさや頻度を判断しやすいとされています(Amos Tversky & Daniel Kahneman, “Availability: A Heuristic for Judging Frequency and Probability,” 1973)。この考え方を採用コストに当てはめると、請求書に表れる費用は具体的で意識しやすい反面、複数の部署や期間に分散した負担は思い浮かべにくく、判断材料から抜け落ちやすいと考えられます。

だからこそ、費用対効果を考えるときには、見えにくいコストのほうを意識的に書き出して整理しておくことが役に立ちます。受検単価だけを天秤に載せてしまうと、比べる相手が片側しか見えていない状態になりかねません。

採用のやり直しで生じる「見えにくいコスト」

見えにくいコストが最もはっきり表れるのが、採用のやり直しが起きたときです。入社した人が早い段階で辞めてしまうと、その分をもう一度採り直すことになります。

このとき生じる負担は、再度の募集費用や選考にかける工数だけではありません。受け入れ側が一から教え直す時間、引き継ぎのやり直し、周囲の社員が採用や指導に割く時間、そして新しい人が戦力になるまでの立ち上がりの期間も含まれます。離職に伴う負担は、募集や教育の費用にとどまりません。既存の社員が採用や引き継ぎに割く時間や、新しい人が戦力になるまでの期間を考えると、職場全体にも影響が広がります。金額として請求書に表れないぶん、見過ごされやすい部分です。

もっとも、早期離職のすべてを採用時のミスマッチと結びつけて考えるのは適切ではありません。離職の背景には、仕事の内容や上司との関係、待遇、労働環境、本人の事情など、さまざまな要因があります。適性検査を入れれば離職に伴うコストがまるごと減る、というものではない、という点は押さえておきたいところです。早期離職と性格特性の関係については早期離職と性格特性の関係でも整理していますので、あわせてご覧ください。

まずは、自社で早期離職や配属後のミスマッチがどの程度起きているか、そのうち採用段階での人物理解を深めることで見直せる部分があるかを整理してみることをおすすめします。

適性検査の費用対効果は、何で決まるのか

適性検査の費用対効果は、どの検査を選ぶかだけでなく、次の三つがそろっているかによっても変わってきます。

一つ目は、自社に解決したい採用課題があるかどうかです。面接だけでは候補者の傾向がつかみきれない、面接官によって評価がばらつく、入社後のミスマッチが続いている――こうした具体的な困りごとがあるほど、検査が働く場面ははっきりします。課題が特にないまま導入すると、結果を受け取っても活かしどころが見えにくくなりがちです。

二つ目は、検査結果を面接や配属、育成の場面で実際に使えるかどうかです。ここでの効果は、離職を防ぐことだけではありません。面接で確認したいポイントを事前に整理できる、面接官による見方のばらつきを別の角度から補える、配属や入社後の関わり方の参考になる、採用判断の根拠を社内で共有しやすくなる――こうした採用判断の質や運用面での効果も、費用対効果の一部です。結果を面接の答え合わせに使うのではなく、面接とは別軸の材料として組み合わせることで、こうした価値は生きてきます。

三つ目は、導入したあとに効果を振り返る仕組みがあるかどうかです。何をもって「役に立った」と判断するのかを決めておかないと、続けるべきか見直すべきかも分からなくなります。検査でわかること・わからないことをあらかじめ押さえたうえで、確認したい点を決めておくとよいでしょう。

導入前に整理したい、費用対効果の考え方

実際に費用対効果を見積もるときは、次のように両側を並べて考えると整理しやすくなります。

かかる費用の側は、年間の検査費用です。料金体系によっては、基本料金に受検人数に応じた費用を加えたかたちになります。何人に受検させるのかによって、年間の総額も変わってきます。

比べる相手の側は、二つあります。一つは、採用のやり直しに伴う費用や工数といった、見えにくいコストです。もう一つは、面接や配属の判断に検査結果を活用できることの価値です。この両方を並べて、はじめて「見合うかどうか」を考えられます。

ここで気をつけたいのは、「離職者を1名でも防げれば元が取れる」といった単純な計算に寄せないことです。すべての離職を検査で防げるわけではありませんし、離職には多くの要因が関わります。そうではなく、自社で起きている課題のうち、採用段階での人物理解を深めることで改善できる可能性のある部分はどこか、その部分と費用とを比べる、という考え方のほうが実態に合います。

まとめ

最後に、要点を整理します。

  • 受検単価だけを見ても、費用対効果は判断できません。見えにくい採用のやり直しの費用や現場の負担も、あわせて整理することが出発点になります。
  • 費用対効果は検査そのものだけでなく、結果を面接・配属・社内共有にどう活用できるかによっても変わってきます。離職防止だけに効果を狭めない見方が大切です。
  • 見積もるときは「離職を1名防げば元が取れる」と単純化せず、自社の課題のうち人物理解で改善できる部分と費用とを比べます。

適性検査の費用対効果があるかどうかは、一律に「ある」とは言い切れません。ただ、自社が抱える採用課題に対して、検査結果を面接や配属の判断に活かせるのであれば、費用に見合う可能性はあります。導入を決めたなら、次は選考フローのどこで実施し、誰が結果を見るかを設計する段階に進みます。

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